甲状腺とコレステロールの関係は?機能低下症や検査について解説
「健康診断でコレステロールが高いと言われた」「食事や運動に気をつけているのに、LDLコレステロールがなかなか下がらない」と悩んでいませんか。コレステロールが高くなる背景には、食生活や体重、遺伝などさまざまな要因がありますが、甲状腺機能の低下が関係している場合もあります。
甲状腺ホルモンが不足すると脂質の代謝に影響し、LDLコレステロールなどが高くなることがあります。寒がり、むくみ、便秘、疲れやすさ、体重増加といった症状が重なる場合は、甲状腺機能低下症も原因の一つとして考えられます。
この記事では、甲状腺とコレステロールの関係、甲状腺機能低下症を疑うきっかけ、甲状腺以外の原因、医療機関で行う検査や治療について解説します。コレステロール高値の原因が気になっている方は、受診や検査を考える際の参考にしてください。
甲状腺とコレステロールの関係

甲状腺ホルモンは、全身の新陳代謝を調整するだけでなく、肝臓などで行われる脂質の代謝にも関わっています。そのため、甲状腺機能が低下すると血液中の脂質に変化が現れることがあります。反対に、甲状腺ホルモンが過剰な状態ではコレステロールが低くなるケースもあります。まずは、甲状腺機能と脂質の関係から見ていきましょう。
甲状腺機能低下による脂質代謝の変化
甲状腺ホルモンが不足すると、肝臓でLDLコレステロールを血液中から取り込んで処理する働きなどが低下し、血中のLDLコレステロールが上昇することがあります。甲状腺機能低下症は、ほかの病気を背景として起こる「続発性脂質異常症」の原因の一つです。
明らかな甲状腺機能低下症では、総コレステロールやLDLコレステロールが高くなり、中性脂肪も正常範囲から軽度高値を示す場合があります。潜在性甲状腺機能低下症でもLDLコレステロールが高くなることはありますが、脂質への影響には個人差があり、研究結果も一様ではありません。コレステロール高値の背景を調べる際には、必要に応じて甲状腺機能も確認します。
コレステロール高値と動脈硬化
LDLコレステロールが高い状態が続くと、血管の壁にコレステロールがたまり、動脈硬化が進みやすくなります。動脈硬化は自覚症状がないまま進行することがあり、心筋梗塞や脳梗塞などの動脈硬化性疾患とも関係します。
ただし、治療の必要性や目標値はLDLコレステロールの値だけで決まるわけではありません。年齢、高血圧、糖尿病、喫煙、慢性腎臓病、心血管疾患の既往なども含めて評価します。甲状腺機能低下症が背景にある場合でも、甲状腺だけに注目するのではなく、将来の動脈硬化リスクまで含めて管理することが大切です。
機能亢進によるコレステロール低下
甲状腺機能が低下するとコレステロールが高くなりやすい一方、甲状腺ホルモンが過剰になる甲状腺機能亢進症では、総コレステロールやLDLコレステロールが低下することがあります。甲状腺ホルモンの過剰によって脂質代謝が活発になるためです。
以前よりコレステロールが大きく低下し、体重減少、動悸、発汗、手の震えなどが重なっている場合は、甲状腺機能亢進症が隠れていないか調べることがあります。コレステロールが低くなったことだけを見て「健康になった」と判断せず、急な数値変化があるときは、ほかの体調変化にも目を向けましょう。
コレステロール高値で甲状腺を疑うケース
コレステロールが高いからといって、すべての方に甲状腺の病気があるわけではありません。一方、以前は正常だったLDLコレステロールが上がった場合や、甲状腺機能低下症を思わせる症状が重なる場合には、甲状腺機能を調べる手がかりになります。健診結果の推移と日頃の体調をあわせて振り返ることがポイントです。
急なLDLコレステロール上昇
毎年健康診断を受けており、以前は問題がなかったLDLコレステロールが急に高くなった場合は、食生活や体重の変化だけでなく、甲状腺機能低下症などの病気が関係していないか調べることがあります。甲状腺機能低下症は、こうしたケースで鑑別が必要な病気の一つです。
健康診断の結果は、今回の数値だけでなく、過去数年分を並べて推移を見ると参考になります。体重の増減や食生活の変化、服薬状況なども診断の手がかりになるため、受診時には過去の健診結果を持参するとよいでしょう。
生活改善でも続く高値
食事内容や運動習慣を見直してもLDLコレステロールが高い状態が続く場合は、生活習慣以外の要因も考えます。甲状腺機能低下症のほか、家族性高コレステロール血症や糖尿病、腎疾患など、病気や体質が関係していることがあるためです。
生活習慣を整えることは重要ですが、改善が乏しい場合に「努力が足りない」と考える必要はありません。もともと適正体重で、食生活や運動習慣に大きな問題がない方でもコレステロールが高くなることがあります。生活改善を続けても高値が続く場合や以前より数値が上がっている場合は、内科で原因について相談しましょう。
寒がり・むくみ・疲労感などの症状
甲状腺機能低下症では全身の代謝が低下するため、寒がり、むくみ、疲れやすさ、体重増加、便秘、動作がゆっくりになるといった症状が現れることがあります。橋本病などによって甲状腺機能が低下した場合には、血液検査でコレステロール高値が見つかることもあります。
ただし、軽度の甲状腺機能低下症では、自覚症状が乏しいケースもあります。また、寒がりや疲労感は甲状腺疾患以外でも起こる症状です。コレステロールの変化と複数の体調変化が重なっている場合は、甲状腺機能を調べる必要があるか医師に相談してください。
甲状腺以外でコレステロールが高くなる原因

コレステロール高値には、甲状腺以外にもさまざまな原因があります。食生活や運動不足などの生活習慣に加え、遺伝的な体質、ほかの病気、薬の影響も考えられます。原因によって対応が異なるため、数値を下げることだけでなく、なぜ高くなったのかを調べることも大切です。代表的な原因を順に見ていきましょう。
食生活・肥満・運動不足
飽和脂肪酸を多く含む食品に偏った食生活や、エネルギー摂取量の過多、肥満などは脂質異常症と関係します。また、運動不足が続くと体重増加や代謝の変化につながり、血中脂質にも影響を及ぼすことがあります。
一方、コレステロールの数値は食事だけで決まるものではありません。極端な食事制限を行うのではなく、現在の食事内容や体重、血圧、血糖値などを含めて生活習慣全体を見直しましょう。必要に応じて医師や管理栄養士へ相談し、無理なく続けられる方法を選ぶことが大切です。
遺伝的な体質
若いころからLDLコレステロールが高い場合や、血縁者に高コレステロール血症、若年での心筋梗塞などがみられる場合は、家族性高コレステロール血症が隠れている可能性があります。遺伝的にLDLコレステロールが高くなりやすい病気で、生活習慣だけが原因ではありません。
診断では、未治療時のLDLコレステロール値、アキレス腱の肥厚、家族歴などを参考にします。若いころの健康診断結果や家族の治療歴が手がかりになることもあります。家族性高コレステロール血症が疑われる場合でも、ほかの病気による続発性脂質異常症がないか、必要に応じてあわせて評価します。
閉経・病気・薬による影響
女性では、閉経後にLDLコレステロールが上昇する傾向があります。また、糖尿病、ネフローゼ症候群や慢性腎臓病などの腎疾患、胆汁の流れが滞る肝・胆道疾患などによって脂質異常が起こることもあります。
副腎皮質ステロイド薬や経口避妊薬など、一部の薬が血中脂質に影響する場合もあるため、受診時には服用中の薬やサプリメントを伝えてください。アルコールの摂取量も中性脂肪に関係します。薬が原因かもしれないと思っても、自己判断で中止せず、検査値や服薬状況を確認したうえで医師と対応を相談しましょう。
コレステロール高値と甲状腺を調べる検査
コレステロール高値の原因を調べるときは、脂質の数値に加え、必要に応じて甲状腺機能やほかの病気の可能性も調べます。甲状腺機能低下症が疑われる場合は血液検査が中心となり、診察所見によって自己抗体や超音波検査を追加することがあります。検査ごとの役割を知っておくと、結果の意味も理解しやすくなります。
LDL・HDL・中性脂肪の検査
脂質の血液検査では、LDLコレステロール、HDLコレステロール、中性脂肪などを測定します。それぞれ役割が異なるため、複数の数値を組み合わせて脂質の状態をみます。
検査項目 | 主な見方 |
LDLコレステロール | 高値が続くと動脈硬化性疾患のリスクと関係します |
HDLコレステロール | 低値の場合は動脈硬化のリスク評価で考慮されます |
中性脂肪 | 食事や飲酒、糖代謝などの影響を受けます |
日本動脈硬化学会では、LDLコレステロール140mg/dL以上を高LDLコレステロール血症、120〜139mg/dLを境界域高LDLコレステロール血症としています。HDLコレステロールや中性脂肪にも診断基準があり、中性脂肪は採血条件によって基準が異なります。治療の目標値については、年齢や持病などを含めた動脈硬化リスクに応じて設定します。
TSH・FT4などの甲状腺機能検査
甲状腺機能は、主にTSHとFT4などの血液検査で調べます。結果の組み合わせによって、甲状腺機能低下症の状態をおおまかに整理できます。
状態 | TSH | FT4 |
原発性甲状腺機能低下症 | 高い | 低い |
潜在性甲状腺機能低下症 | 高い | 基準範囲内 |
中枢性甲状腺機能低下症など | 一般的な組み合わせと異なることがある | 低い〜基準範囲内 |
甲状腺そのものの働きが低下する原発性甲状腺機能低下症では、一般的にTSHが高く、FT4が低くなります。TSHが高いものの、FT4が基準範囲内の場合は潜在性甲状腺機能低下症が考えられます。
ただし、中枢性甲状腺機能低下症などでは一般的な数値の組み合わせと異なる場合があります。また、基準範囲は検査施設や測定方法によって異なります。一つの検査値だけで自己判断せず、症状や服薬歴、過去の検査結果なども含めて医師から説明を受けましょう。
甲状腺に関する自己抗体検査
甲状腺機能低下症の原因として多い橋本病が疑われる場合は、抗TPO抗体や抗サイログロブリン抗体などの自己抗体を調べることがあります。甲状腺に対する自己免疫反応が起きているかをみるための検査です。
自己抗体の結果は、甲状腺の腫れや超音波所見、TSH・FT4などと組み合わせて診断につなげます。自己抗体が陽性でも、その時点で甲状腺機能が低下しているとは限りません。橋本病であっても甲状腺機能が保たれている時期があるため、自己抗体の有無と現在の甲状腺機能は分けて考える必要があります。
必要に応じた甲状腺超音波検査
甲状腺の腫れやしこりがある場合、橋本病などの甲状腺疾患が疑われる場合には、超音波検査を行うことがあります。首の前側に器具を当て、甲状腺の大きさや形、内部の状態を画像で観察する検査です。
コレステロールが高い方全員に必要な検査ではなく、血液検査や触診などの結果から必要性を検討します。甲状腺機能そのものを調べる中心はTSHやFT4などの血液検査であり、超音波検査は甲状腺の形態を調べるために用いられます。それぞれ役割が異なるため、必要な検査を組み合わせて原因を調べます。
甲状腺機能低下症の治療とコレステロール管理

甲状腺機能低下症がコレステロール高値の背景にある場合は、甲状腺の治療と脂質の管理を切り離さずに考える必要があります。治療方法や対応の順序は、甲状腺機能の程度だけでなく、年齢や持病、動脈硬化性疾患のリスクによっても変わります。それぞれの治療と、その後の管理について見ていきましょう。
甲状腺ホルモンの補充療法
甲状腺ホルモンが不足している場合は、合成T4製剤などの甲状腺ホルモン製剤を用いて不足分を補う治療が行われます。投与量は甲状腺機能、年齢、心臓の病気の有無などを踏まえて調整するため、自己判断で増減したり中止したりしないことが重要です。
一方、軽度の潜在性甲状腺機能低下症では、すべての方が直ちに薬物治療となるわけではありません。一過性の変化ではないか再検査することもあります。TSHの値や症状、年齢、妊娠の希望、自己抗体、コレステロール高値などを考慮し、経過観察にするか治療を始めるかを個別に検討します。
治療後のコレステロール再評価
甲状腺機能低下症が原因でLDLコレステロールが上昇している場合、甲状腺ホルモン補充によって甲状腺機能が正常化すると、LDLコレステロールが低下することがあります。そのため、甲状腺機能を整えた後に脂質をあらためて測定し、脂質低下療法が必要かどうかを検討します。治療前後の検査結果を比較すると、甲状腺機能低下が脂質にどの程度関係していたのかを考える材料にもなります。
なお、甲状腺機能低下症が未治療のまま脂質を下げる薬を始めると、副作用として筋肉の障害が起こりやすくなることが知られています。そのため、脂質の薬を検討する場合でも、先に甲状腺機能を整えることが一般的です。どのような順序で治療を進めるかは、動脈硬化性疾患のリスクなども踏まえて医師が判断します。
脂質異常症に対する治療
甲状腺機能を整えてもLDLコレステロールが高い状態が残る場合は、食事や運動などの生活習慣を見直し、必要に応じて脂質を下げる薬による治療を検討します。治療目標は全員同じではなく、年齢や持病、動脈硬化性疾患の有無などによって異なります。
また、甲状腺機能低下症とは別に、家族性高コレステロール血症や糖尿病などが合併しているケースもあります。甲状腺の治療だけで終わりにせず、再検査の結果や全身の状態をもとに、その後の脂質管理を考えることが大切です。サプリメントや市販品だけに頼らず、必要な治療について医師へ相談しましょう。
甲状腺とコレステロールに関するよくある質問
コレステロールが高いと、甲状腺の病気があるということですか?
コレステロールが高いからといって、必ず甲状腺の病気があるわけではありません。食生活や体重、遺伝的な体質、糖尿病や腎疾患、薬などもLDLコレステロールに影響します。ただし、甲状腺機能低下症が背景にあることもあるため、原因を調べる際に甲状腺機能を確認することがあります。
コレステロールが高いとき、甲状腺の検査も受けたほうがよいですか?
以前は正常だったLDLコレステロールが急に上がった場合や、生活改善を続けても高値が続く場合、寒がり・むくみ・疲れやすさなどの症状が重なる場合は、甲状腺機能を調べる手がかりになります。すべての方に必要なわけではないため、健診結果や体調をもとに、検査が必要かどうかを医師に相談するとよいでしょう。
甲状腺機能低下症を治療すると、コレステロールは下がりますか?
甲状腺機能低下症が原因でLDLコレステロールが上昇している場合は、甲状腺ホルモンの補充によって甲状腺機能が正常化すると、LDLコレステロールが低下することがあります。ただし、下がり方には個人差があり、甲状腺を整えても高値が残る場合には、あらためて脂質異常症の治療を検討します。
コレステロールを下げる薬は、すぐに始めたほうがよいですか?
甲状腺機能低下症が背景にある場合は、先に甲状腺機能を整えてから脂質を再評価するのが一般的です。未治療のまま脂質を下げる薬を始めると、筋肉の障害などが起こりやすくなることがあるためです。治療の順序や薬の必要性は、動脈硬化性疾患のリスクなども踏まえて医師が判断するため、自己判断で開始・中止しないようにしましょう。
まとめ | コレステロール高値では甲状腺機能にも注意
コレステロールが高くなる原因は、食生活や運動不足だけではありません。甲状腺機能低下症が背景にあり、LDLコレステロールなどが高くなっている場合もあります。特に、以前は正常だったLDLコレステロールが急に上昇した方や、寒がり、むくみ、疲れやすさ、体重増加などが重なる方では、甲状腺機能を調べることが原因を知る手がかりになります。一方、遺伝的な体質、糖尿病、腎疾患、薬なども脂質異常の原因となるため、検査結果や体調を含めて判断することが大切です。
甲状腺機能低下症が見つかった場合は、甲状腺機能を整えた後に脂質を再評価し、必要に応じて脂質異常症の治療を検討します。柳田医院では、内科および甲状腺疾患の診療を行っています。健康診断でコレステロール高値を指摘された方や、寒がり・むくみ・疲れやすさなども気になっている方は、お気軽にご相談ください。
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